
少子化が進む中、政府は「こどもまんなか社会」の実現に向けて、児童手当の拡充や保育の受け皿整備など大規模な子育て支援策を打ち出しています。その財源として新たに設けられるのが「子ども・子育て支援金」です。2026年度(令和8年度)4月から、健康保険等の公的医療保険の保険料に上乗せして徴収が始まります。
本コラムでは、新制度の概要から具体的な負担額、企業への影響まで、知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
子ども・子育て支援金制度は、2024年6月に成立した「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」に基づき創設された、少子化対策のための新たな財源確保の仕組みです。
この制度の最大の特徴は、公的医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度等)の保険料に上乗せする形で、全世代・全経済主体から支援金を徴収する点にあります。医療保険制度が選ばれた理由は、他の社会保険制度と比較して賦課対象者が広く、すでに後期高齢者支援金や出産育児支援金など世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれているためです。
徴収された支援金は「子ども・子育て支援法」で使途が明確に定められており、少子化対策以外には一切使われません。
支援金の徴収は2026年度から2028年度にかけて段階的に引き上げられます。
| 年度 | 徴収総額(見込み) | 支援金率(被用者保険) |
| 2026年度(令和8年度) | 約6,000億円 | 0.23% |
| 2027年度(令和9年度) | 約8,000億円 | 段階的に引き上げ |
| 2028年度(令和10年度) | 約1兆円(満額) | 約0.4%程度(上限) |
2028年度で上限が法的に確定するため、際限なく増え続けることはありません。なお、被用者保険の場合、2026年度の支援金率は一律0.23%で、事業主と被保険者で折半負担となります。
こども家庭庁が公表した2026年度の負担額の試算は以下のとおりです。まず、医療保険制度別の1人あたり平均月額をみてみましょう。
| 医療保険制度 | 2026年度 月額負担(平均) |
| 被用者保険(協会けんぽ・健保組合等) | 1人あたり 約500円 |
| 国民健康保険 | 1世帯あたり 約300円 |
| 後期高齢者医療制度 | 1人あたり 約200円 |
会社員・公務員が加入する被用者保険の場合、年収別の本人負担額(労使折半後)は次のとおりです。計算式は「標準報酬月額 × 0.0023 ÷ 2」です。
| 年収 | 月額負担(本人分) |
| 200万円 | 約192円 |
| 400万円 | 約384円 |
| 600万円 | 約575円 |
| 800万円 | 約767円 |
| 1,000万円 | 約959円 |
| 💡 ポイント
被用者保険の場合、事業主(会社)が同額を負担するため、本人負担は実質半額です。また、国民健康保険加入者のうち、18歳年度末までの子どもの分の支援金は全額免除されます。低所得世帯には医療保険料と同様の軽減措置も適用されます。 |
支援金を財源として、法律で定められた以下の6つの事業が実施・拡充されます。これら以外の目的には一切使用されず、新たな使い道を設定するには閣議決定が必要です。
| 事業名 | 概要 |
| 児童手当の拡充 | 所得制限撤廃、高校生年代まで延長、第3子以降 月3万円に増額(2024年10月実施済み) |
| 妊婦のための支援給付 | 妊娠届出時5万円 + 妊娠後期以降 胎児数×5万円(2025年4月制度化) |
| こども誰でも通園制度 | 就労要件を問わず保育所等を利用可能に(2026年4月給付化) |
| 出生後休業支援給付 | 男女で育休取得した場合、最大28日間 手取り10割相当を支給(2025年4月~) |
| 育児時短就業給付 | 2歳未満の子の養育で時短勤務中、賃金の10%を支給(2025年4月~) |
| 国民年金保険料免除 | 自営業等の第1号被保険者、子が1歳まで保険料免除(2026年10月~) |
こども家庭庁の試算によると、子育て世帯は一人の子どもにつき18年間で約146万円の給付拡充を受けられるとされており、社会全体で月数百円ずつ負担することで、子育て世帯に大きな経済的支援が実現される仕組みです。
2026年4月分保険料(5月給与天引き分)から徴収が開始されるため、企業としては以下の点を確認・準備しておく必要があります。
| 企業の準備チェックリスト
1. 給与計算システムの対応確認:支援金率0.23%の上乗せに対応できるか、給与計算ソフトのアップデート時期を確認する 2. 人件費の見直し:労使折半のため、会社負担分の増加額を算出し予算に反映する 3. 従業員への周知:給与明細に新たな控除項目が追加されるため、制度の趣旨と金額について事前に説明する 4. 社会保険料の管理体制:健康保険料・介護保険料・支援金が一体で徴収されるため、経理処理のフローを確認する |
子ども・子育て支援金制度は、少子化という国の最大の課題に対し、社会全体で子育てを支えるための新たな財源確保の仕組みです。2026年度は月額数百円の負担からスタートし、2028年度にかけて段階的に引き上げられますが、法的な上限が設けられています。
企業にとっては、労使折半による会社負担の増加を見据えた予算計画と、給与計算システムの対応が急務です。一方で、少子化対策の推進は将来の労働力確保や国内市場の維持にも直結するため、中長期的には企業にとってもプラスの効果が期待されます。
制度開始まであとわずかです。早めに情報を収集し、スムーズな対応を心がけましょう。
| 【参考】
こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」 厚生労働省「医療保険制度の概要」 ※本コラムは2026年1月14日時点の情報に基づいています。最新の情報はこども家庭庁等の公式サイトをご確認ください。 |